行間から溢れ出る温かさ
これは筆者の博士論文だったものだそうで、とても難しい内容であった。それ故に実際のところ、読み終えるだけでも一苦労だった。しかし、読み進めながら涙が止まらなくなったことが何度もあった。それは、論文の行間の端々に人の血の温かさが通っているのが垣間見えたからだ。学術論文で人の血が通っている温かさを感じるものは稀有である。しかし、筆者の文章からは常に行間に人の血の温かさや語っている人物、事物に対する愛情が感じられた。 228事件、それ以前、それ以降の歴史の流れの中で、台湾人自身の主権を求めて倒れていった人たちが流した血、落とした命が今日の台湾を作り出していったこと、彼らの犠牲が決して無駄ではなかったこと、彼らの死が犬死ではなかったことを、筆者の論文は事実を描写しつつ、その行間でも伝えていっていた。多くの台湾の知識分子たちが試行錯誤を繰り返しながらも求めたものや、その行為は決して無駄ではなかったのだと、この論文を読み、心から感じたからこそ、涙が止まらなくなったのだ。 台湾を巡る一連の感傷的なものや情緒主義的なものとは全く違い、これはきちんとした冷静な視点で描かれた論文である。だが、それでいて抑えているにも関わらず文章の行間から湧き出てくる人への温かさ、優しさが筆者の文章の行間からほとばしり出ている。 台湾を知りたいと思う人には、ぜひ、この本を読んでもらいたいと思う。
東京大学出版会
台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい (小学館文庫)
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